関書店 店主のとっておき!
- 2023/6/13 :今日のおすすめは、稀覯本『小銃 小島信夫』です。この本は軍隊生活の失意のどん底で、望郷の思いをたくした小銃とのめぐり会いをユーモアをまじえて描いた表題作「小銃」。アメリカン・スクールを見学にでかける教員たちの集団に、戦後の戯画化された人間像を映し、植民地化された日本への諷刺をきかせた芥川賞受賞作「アメリカン・スクール」など、独自の文学領域を開拓した著者の初期短篇10篇を収録。
関書店 おすすめ書籍の紹介
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車谷長吉「赤目四十八瀧心中未遂」 (直木賞1-13)
慶大独文卒後出版社を転々とした後、大阪で丁場や下足番、料理人を十年余。辛酸をなめた私生活は人格を歪めるもこれが独特の作風を生み、ついに苦節20年にして第119回直木賞を受賞。他方で精神・神経を病むことになった。50余歳にして詩人((高橋順子)と結婚するも強迫神経症は軽快することはなかった。日課の朝の散歩中コンビニで買った大福を詰まらせ窒息死した
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田中慎弥 「共食い」(芥川賞4-19)
第146回芥川賞受賞時の記者会見で選考委員の石原慎太郎知事(当時)をあてこすり、「閣下、受けてやる」との発言が空前の売れ行きをもたらした。社会に出ることなく十余年の執筆生活を続け、母親以外の女性と接触することがなかった筆者は、受賞後出版社の女性編集者からの電話に狼狽した話は有名。
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佐藤愛子 「戦いすんで日が暮れて」(直木賞4-4)
お嬢様育ちの筆者が事業に失敗した夫の莫大な借金を背負い、借金取りからの長期にわたり取り立てにあった現実を面白おかしく書き綴った作品が第61回直木署を受賞。
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三島由紀夫 「岬にての物語」(稀覯本1-11)
官吏一家に育ち、祖父のすすめで東大法学部卒後旧大蔵省に入るも堅苦しい官僚生活になじめず2年で退職。祖母の教育の下幼少期から文才が開花、復古主義が高じ私的軍隊を立ち上げ、欽定憲法復活を求め自衛隊に突入し自害。MISHIMAのこの前時代的な事件は世界を震撼させるも、他方、旧かなづかいによる美しい文体は今日も多くの読者を引き付けて離さない。